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Psychedelic Trash vol.1

rjnk.bandcamp.com

 

2017年の正月にPsychedelic Trash vol.1というコンピレーションアルバムが出ました。私も参加しています。上記のリンクからダウンロードできるのでぜひ聴いてみてください。値段が決められる投げ銭システムで、値段に「0」と入れればタダでダウンロードできますし、なんなら10万円でもOKです。

 

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ジャケットにでかでかとゴミと書いてあるということは真剣に聴かなくていいということなのでしょう。リスナーからすれば真剣に聴くべき音楽がたくさんあり、作り手からすれば頑張って作らなきゃいけない音楽がたくさんあるこの世界でなんとユルいコンピレーションアルバムでしょうか。

 

私はマジメなので毎日息苦しい思いをして生きておりますが、それというのもみんなが頑張りすぎてるからです。みんなが頑張ってるから「私も頑張らないと」と思ってしまうのです。いや別にそれが間違ってるとは思わないけど、でも正直疲れることもあります。

ところでアビリーンのパラドックスというものをご存知でしょうか?こんな話があったそうです。(wikiより抜粋)

 

ある八月の暑い日、アメリカ合衆国テキサス州のある町で、ある家族が団欒していた。そのうち一人が53マイル離れたアビリーンへの旅行を提案した。誰もがその旅行を望んでいなかったにもかかわらず、皆他の家族は旅行をしたがっていると思い込み、誰もその提案に反対しなかった。道中は暑く、埃っぽく、とても快適なものではなかった。提案者を含めて誰もアビリーンへ行きたくなかったという事を皆が知ったのは、旅行が終わった後だった。

 

こんな話はざらにあります。 誰も得してない。でも我々を支配する空気がそのような不合理な事態を起こさせるのです。

なあ?もうええやん。いや、そうじゃないと世の中回らんのんかもしれんけどさ。でもせめて音楽にはそういうしがらみから離れたやつがあってもいいじゃない。この世界は広くて音楽は自由なんだから。だからこそ「よしゃ!これはゴミじゃ!誰ぞ文句あるかーい?!」と宣言して、頑張らない姿勢により閉塞感を打ち破ることが行われたのではないでしょうか?

 

でもまぁ究極的には他人なんかどうでもいいんですよねぶっちゃけ。苦しんで死ぬなら勝手に死ねって話だし、誰に合わせるべきでもない。このコンピは閉塞感がどうとかってそれだけの話じゃないと思います。そりゃ他人も少しは気になります。ちゃんと休めてるかなとか飯食えてるかなとか、おせっかいながらも気になったりします。でもそれよりも重要なのは、ただ単にゴミみたいな音楽が好きという動機です。やりたかったから勝手にやっただけだと思われます。

ゴミじゃない音楽ってたくさんありますね。私はタンゴを聴いて「素晴らしいなぁ」って思ったりすることがあります。でもわけのわからない音楽も好きです。例えば日本の古いテレビCMを遅く引き延ばして繰り返したりする曲があります。こういうのも大好きです。

タンゴに比べればCMを引き延ばした曲なんかゴミです。でも、そういうゴミがこの世から根絶やしにされたら、それは残念なことだと思います。この世にはいろんな音楽があり、いろんな可能性があるのです。メインストリームがあれば、アンダーグラウンドもあるのです。「なんだこりゃ?」というわけのわからない、いわばちょっとした恐怖を与えてくれるような音楽も私は面白いと思うのです。ゴミは不気味で面白い。

いや、こういう理屈は不完全です。それだけで説明することはできない。とにかく好きなんです。好きという気持ちを説明するのは難しい。

私と同じような人はゴミみたいな音楽を好きになるだろうし、そうでない人はゴミみたいな音楽なんてどうでもいい、あるいは憎しみを覚えるかもしない。それについて私は別にどうしようというわけでもありません。ただやりたいからやっただけのことにあれこれ理屈をつけようとするのは、自分でもどこだか知らない場所へ案内してるようなものです。ついて来てる人に「どないやねん!」というお叱りをいただくようなハメになりそうです。なんだかんだ言うのはここらへんでやめにしようと思います。

 

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では、お節介ながらも今から一曲ずつ解説をしていこうと思います。ですがこれは私のゴミ観によるガイドなので、私とは違う見方からこれらの曲のゴミ性を語ることもできるでしょう。

私はこういうこと書くのが好きだしこういうこと書く才能あるんで書きます。

 

つぎの祭りへ

 平田義久 feat. 初音ミク

 

夏の曲です。イントロのドラムのソロ(フィル)が終わり、鐘のようなブワーっと広がる音が印象的です。左でシャンシャンなってるシンバルがノイズまみれで蝉の声のようだ。右のアコースティックギターがリズム楽器的にジャカジャカリピートされ、ベースがどこを向いてるか分からないような音色とフレーズで入ってきます。そしてバスドラムのサウンド。まるで和太鼓のようですが、芯がなく、従来のドッ!という詰まった音ではありません。空虚です。そして真ん中のギターのフレーズにも何かありそうです。なんだかいやらしいフレーズです。そのいやらしいフレーズから派生したギターソロがアドリブで適当に弾いたようなユルさ。そこに打って変わってチャキチャキしたキーボードが入ってくる。まるで祭りの縁日のようにごちゃごちゃ入り乱れています。全体的に芯がブレている。祭りばやしが遠くから聞こえてるようで、夏の暑くてダルい、幻のような曲です。でもこれ終わりの曲なんですよね。「次の祭りへ」て、もう一発目から祭り終わってるやんけ。ゴミを理解するうえで重要な要素が詰まっています。最初のイントロデューシングにもってこいのゴミでした。

 

私の目覚まし時計を勝手にセットしないでください

  ゆらぎと破片

 

抜けてたり詰まってたりのリズムです。全体的に音の立ち上がりが独特です。ハイハットのリズムとかカチッとしてない。引き延ばされ、引き縮められ、もうゆらっゆらです。そしてノイズまみれのクラップ(拍手)やギターが歯をヤスリで削ってくるような音を立てています。基本的に曲が進むにつれて新しい何かが被さり、それらが繰り返されています。やがて音が減るものの、そこからまた何か起こるかと期待すれば結局何も起こらないという、「どないやねん!」とつっこみたくなるような構成です。そもそも最初から流れてるホーンパート(サックス?)が絶妙に何がしたいのか分からない。「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」と言いながら沼に沈んでいっとるようなホーンです。あとタイトルも意味が分かりません。確かに勝手に目覚まし時計をセットされたら腹が立ちます。でもなぜそれを持ってきたのでしょうか?不思議ちゃんです。ここもまたゴミポイントです。

 

Planet trash

 MSS Sound System

 

この曲はフリージャズの一部分が切り抜かれて繰り返されています。元ネタとなった曲も混沌としていますが、その混沌は例えば流れていく川のようなものでした。しかし、この曲はループさせることにより”仕切り直し”がなされています。例えるなら、ゴムを伸ばして手を離すようなものです。手を離せば伸びたゴムは元の長さに戻りますが、その際の縮むエネルギーがさまざまな効果を及ぼすのです。この曲はさらにバスドラムで起点を補強し、SFドラマのコンピュータのような音で混沌を重ねています。「ドーンンンンン…」とゆっくり減衰していくバスドラムと、カオスなウワモノは時間の密度を構成します。その時間の密度は始めは濃く、後は希薄なものです。それは宇宙が膨張していくような感じです。それがループします。そしてそれとは別な軸がもう一つ流れています。それは途中で被さってくる伸びたシンセと過激なドラムとベースです。これらはカオスをガン無視して勝手にやっているかのようです。”無視したビート”。いいですねぇ。。。あ、でもゴミ。

 

発熱

 とーず

 

うねるノイズから始まります。そして右で繰り返される何がしたいのかわからないフレーズ。それから「あー」しか言わない歌。これ私もよくやります。私は別に意味はないけどただ単に声を出したい時や、単純に歌詞を考えるのが面倒な時にそういう風にします。まさかこれもそうなのでしょうか?右の何がしたいのかよくわからないフレーズに注目しましょう。この何がしたのか分からないフレーズは「適当に進んだけどこっちにも行ってみようかな」的な感じです。どこに行くのか自分でも決めてない感がバリバリ出ています。だから突然高い音に移行したりしちゃうんです。やがて曲は感動的なパートに移ります。ノイズが消えてコーラスだけになります。うるさいのおらんなったら感動的。そしてエレガントなピアノの和音が挿入されます。「良い話にまとめようとしてるのかな?」と思った矢先ふたたびノイズが「おるで」と言わんばかりにぶち壊します。そしてシンセのつまみをギュッと絞るような音が高揚感を出したと思ったら唐突に終わります。 ??? ゴミ。

 

サイケ・トラッシュ・アシッド・ダンス

 enaluke

 

このコンピにはさまざまな音楽的バックグラウンドを持つ方々が参加していてそれぞれ好きにやってるので面白いです。この曲の作者であるenalukeの音楽的バックグラウンドはトランス・ハウスなどのクラブ系の音楽と思われます。リキッドな質感のビートとうねうねしたスパーキングなシンセ。でも歌詞が意味不明です。レゲェ的なリズムと相まってフリーキーなテンションになっています。声が細く、変なこと言ってる割に必死な印象も受けます。どういう立場から歌ってんだよ。この曲は多分すべて打ち込み(自動演奏ソフトを使ってる)で使ってる声もボーカロイドであり、人間の歌や演奏は入ってないと思います。これ今となっては当たり前だけどよく考えたらなんかすごくないですか?今の時代はパソコンとネットのおかげで一人でもいろいろ好き勝手できるようになったし、その分ゴミもやりやすくなりました。良い時代ですね。打ち込みだけなぶんこの曲はある種の無機質さがあります。多分そういうのが全然知られてない1970年代にタイムスリップしてそこの人に聞かせたら多くは「不気味」だと思うでしょう。もちろん今の時代にはそういう音楽がたくさんありますが、そのクールさは今も私を惹きつけます。ゴミゴミゴミ。

 

T.R.Ash

 Jake

 

日常感があるけど、例えば私が日常を描くとしてもこういう風には切り取れません。情報というものの扱い方が私よりうまい気がします。ところで、私がゴミという概念を知ったのもこの曲の作者であるJakeの発言によってでした。(Jakeはこの曲を最後に引退してしまいました。でも彼の作品はまだニコニコ動画などで聴けます)Jakeの言うゴミとはいったいなんなのか?それは別に言葉の通りなのですが、考えてみれば難しい話です。例えばそれはラフマニノフが嫌いな人が言う「ラフマニノフはゴミだ」という意味とは違います。ではいったいどういう価値観から見てのゴミなのか?どうなんでしょうね?”メインストリームの価値観”と言えばそれまでだけど、それだけじゃない気もします。まぁそれを考えるのは今度にしましょう。さて、このT.R.Ashという曲はカッコいい。そもそもこのコンピはカッコいい曲ばかりだ。それじゃいったいゴミとは何なんでしょうね?謎です。もっとも、この曲の浮遊感、何言ってるかわからない歌、気圧のような音の塊、それらはまさしくゴミです。まったくこの曲はつかみどころがない。不思議ですね。これもゴミ!

 

20170101

 Ladypanther

 

なんか東南アジアっぽい気がします。しかし、テクノロジー系のSFっぽくもあります。東南アジアとテクノロジー系SFって相性いいんでしょうか?ところでこの曲にはロック的なギターが使われています。でもこれがロックだとしても、日本などでヒットしてるポップミュージックのなじみ深いロックとは違っています。なじみ深いロックとは、コードや伴奏がカチッとしていて歌があるような分かりやすいやつです。しかしこの曲は抽象的です。この曲はなじみ深いロックの構成はさておいて「音の響き」ということに目が向けられているのではないでしょうか?しかし音の響きというフィールドは分かりにくいです。私もそういう見方・聴き方があると知ったのはつい最近のことです。ビートが横のラインで、コードが縦のライン、フレーズが縦横だとすれば音楽にはそのほかに何もないような気がします。でもあるんですね。その盲点が音の響きです。思えば音響的な実験を始めたポップミュージックというのがロックでした。こういうことも今後いろいろ考えたいです。しかしタイトルが20170101ってSFっぽいタイトルと思わせて完全に正月やんけ。いまいちパリッとせんなぁ。はい、ゴミです。

 

attention

 solidsmoke

 

ロックです。日本などでヒットしてるポップミュージックのなじみ深いロックとは違っています。どこが違ってるかというと一聴して分かるようにぜんぜん綺麗じゃねぇ。こういう音楽を自らの生活に歓迎することをためらう人もいるのではないかと思います。ところで私は別に”日本などでヒットしてるポップミュージックのなじみ深いロック”なんてなくなればいいと思ってるわけではありません。でもそれだけじゃ面白くないという話です。多分この曲、文化祭とかでやったらひかれるでしょうね。10人中2人が笑い、4人が無視し、2人が顔をしかめ、1人が知ったかぶりをして、1人がすげぇって思うような曲です。マジ文化祭でやったら一種のテロですよ。「お前ら殴る代わりにこれ聴かせたル死ねぇぇぇええ!!」って感じの曲です。痙攣のようなビート、フリーなフレーズ、ノイズ、鬱屈した男の子の好きなものがいっぱい詰まってる。このコンピの中で一番激しいゴミです。

 

洗濯屋の犬

 そりすも

 

ノスタルジック。そして歌い方がバカっぽい。多分犬のレベルに合わせているのでしょう。優しさを感じます。吠えている犬は、まぁよその家の犬をこんな風に言うのはアレですけど、多分そんな賢い方ではないと思います。バカというよりは所帯じみてると言った方が正しいかもしれない。少なくともセレブが飼ってるような血統書付きの高級な犬ではないと思います。私もどちらかと言えば高級な人間ではないのでこういう空気感は覚えがあります。洗濯屋が逆にめっちゃセレブだったらウケるな。私事で恐縮ですが子供の頃にとても吠える犬を飼っていました。家に入れたら私の遊戯王カードを噛んで紙くずにするような犬でした。実はけっこういいとこの犬を貰ってきたはずなのですがなぜか凶暴に育ってしまったという、まぁ飼い主(私)の未来を見事に暗示していた犬でしたね。この曲でカチカチなってる音はカセットテープレコーダーを思わせます。私は中学生時分、ゴミ捨て場で拾ったテープレコーダーを水で洗って乾かし使っていたことがあります。それでテレビを録音したりオリジナルラジオテープを作っていました。そういう頭の悪い雰囲気が詰まっている曲です。まさにゴミ。

 

安直廃棄物

 とーず

 

名前の通り安直な構成の曲です。クラブミュージックなどの踊るための音楽もイージーな構成でお約束みたいなものはありますが、その場合強烈なビートをつけたり派手にしたりしています。しかしこの曲は地味です。いったいなにがしたいんだ?よくわからんけどこの曲は一人で勝手に進んでいきます。しかも勝手に盛り上がったりしてます。勝手に盛り上がるな。そして段々音が少なくなっていき終わります。なに勝手に帰っとんねんって話ですよ。まったく謎です。安直とはいいながらも実は割と凝ってるところもあります。延々同じ調子でリピートしてるわけではなくある時はベースを変えたりある時はシンバルを挟んだりといろいろやってます。でも絶滅的に地味です。なんなんだいったい。。。ディス・イズ・ゴミ。

 

笛のお姉さん

 rjnk feat. Maysys

 

笛のお姉さんであるMaysysはこの前はチンアナゴのお嬢さんでした。次はいったい何になるんでしょうか。狂人的サウンドの笛がトラックのメロウな雰囲気をぶち壊します。そんなことしちゃダメでしょ。トラックはトラックで、笛は笛でそれぞれ生きる場所が探せばどこかに必ずあるはずなのですが、今日のところはぶち混ぜられて終了という残念なボーイミーツガールの様相を呈しています。でもトラックの話に耳を貸せば笛も実はええ子なんかなとは思えます。まぁトラックがそういうんなら俺は別に反対したりとかせんわみたいなファミレスでそういう会話してる気分になります。席でトラックとこういう話をしてるなか、笛はドリンクバーを行ったり来たりしてジュース混ぜて作った変な飲みものを初対面の私に差し出します。本当にいいのかトラック?笑かすゴミです。

 

みえるけむりのなかで

 キヅミタ

 

作ったのは私です。この曲は「滅茶苦茶HAPPY劇場」というアルバムを作ったすぐ後に作ったのでした。だからでしょう「滅茶苦茶」のコンセプトが多分に引き継がれています。つまり布団に入って寝ながら聴くことを想定したのでした。サイケデリックということで変性意識に入るような曲にしようと思い、催眠音声をイメージして作りました。催眠音声というとエロいやつが多いのですが、私もエロいのを作ろうと思いました。個人的に「他人の幼少期の思い出話」はエロいと思ってるのでそういう歌詞になりました。息継ぎから突然鳴る強烈な音は頭を真っ白にさせる効果を狙ったものでした。後半のノイズは主に”巨大なものに組み込まれている”という迷子になった時の不安を表現しています。ただ怖い思いをさせたまま放り投げるのもよくないと思い、最後は”家に帰る”という一応安心できる終わり方にしました。このとおり私の曲は念入りに考え込まれて作られているのでゴミではありません。

 

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いろんなゴミがあって楽しいコンピでした。ツッコミながら聴くというのもゴミの楽しみ方の一つではないでしょうか。でもゴミなんだから深く考えなくていいのかもしれませんね。うまく乗せられてしまいました。

 

psychedelic trash vol.2もある予定です。

 

rjnk — Psychedelic Trash vol.2 やります

 

今度のコンピはコンセプトがあり「架空の映画のテーマ曲」というものです。私も参加させていただきます。ではまたよろしく。